帰国初 福井での制作記録
しばらくぶりの活動記録更新です!
このブログを定期的に見ている方がどれくらいいるかわかりませんが、1年過ごしたフランスから帰国したのが今年2024年5月26日なので五か月ほど更新していませんでしたが無事生きています!
あまり詳しく話しても仕方ないのでシンプルに要約すると、帰国後スマホと買ったばかりのパソコンを意図的に壊されてその事件のあれやこれやで仕事に集中が出来ずにいましたが、やっとなんとかなりそうな兆しが見えてきたといったところです。
さて
そんな中で八月下旬三日間で学生時代の縁で福井県の越前市でのお仕事を頂きました。詳細は
その時期に行われる「千年未来工藝祭」という日本全国の工芸作家が集い、販売、ワークショップを行なうイベントで、ここのメインアリーナの中心となるブースの空間を折り紙で演出するという僕にとっては前代未聞となる「空間演出」を折り紙で創り上げるという課題でした。

ミーティング段階から見えていた課題
恐らくイベント2か月前くらいからこのお仕事の話は頂いていて、越前和紙を使いどのように会場の雰囲気を作るかということなのですが、ここで学生時代にご縁があったプロデューサーさんから折り紙アーティストである僕に白羽の矢がどうやら立てられたようです。
色々と案はありましたが最後に残ったのは会場の中心となる空間の天井を何かしら折り紙の技巧を施した巨大な越前和紙で埋めるという案にたどり着きました。
会場の広さから、1m x 1.75mという巨大な越前和紙を吊下げる(当日まで3.5mの和紙で折ることになってた)のですが
- 今まで作ってきた紙素材の中でも前代未聞の大きさであること
- 三日間の制作期間で作れるのかという時間の問題
- どんな紙質かは現場で素材を触ってしかわからない
- 大きいと吊下げる時に剛性を保ちきれないのでは…
などなど現場に行ってからでないとわからない問題が山積。
決まったのはどのような作品を作るかというイメージだけです
作品スタイルの決定
まずそういったどうにもこうにも避けられぬ問題の中で工夫のメスが入れられそうな課題は、3日間という短い期間で制作が可能な折り筋パターンの考案です
助っ人を読んで簡単なパターンのパーツを無限に作ってもらって組み合わせで作品を作る案などいろいろ考えました…
そもそも折り紙を創るにあたり一番時間がかかるのは「折り筋を付ける」過程。
超複雑作品だと30cm角の折り紙でもこの「折り筋を付ける」段階で1時間2時間をこの過程で溶かし込んでしまうため、問題は1m X 3.5mの素材ならその何倍もかかってしまう。ここを如何に短縮するかが事前に考える折り筋パターンの工夫で全く結果が変わると考えました。
そこで思いついたのは不規則なパターンを使った作品です。
折り紙は元来、所謂「角と角を合わせる」ようなきちっとした折り方を通して完成する作品をイメージするかもしれませんが、この制約を飛び越えて不規則でもなお折り紙作品が折り紙らしい美しさを纏うことは可能なのか、そんなテーマで生み出した作品があり今回はそのパターンを使用することにしました。
https://www.instagram.com/p/C0dkQWgLrm8/(僕のインスタにとびます)
折り紙の世界に「どこにも合わせない」不規則さを作品に取り入れることで一つ一つ異なるパターンが必然的に表れ、人の手と想いが込められた和紙の有機的なテクスチャーと折り紙の技が持つ直線的で無機的なパターンが共存するデザインとなり、その上で大幅に時間が短縮されるという表現の面でも効率の面でも最適なパターンに辿り着いたのでした。
しかし当日福井に到着して素材を触るまで確実に決まっていたことはこのことだけで、あとのことは素材を手にしてみないと何も決まりません。
福井入りー制作
福井について制作にかけた3日間を完結に説明するなら、生活に必要な最低限を除いて「ひたすら折り続けた」3日間でした
第1作目は計画通り完全な不規則パターンを1mX3.5mの越前和紙を折りたたまなければならないんですが、想像以上に素材が柔らかくその上あまりに大きく、吊下げたときに剛性を保てない上に扱いづらいことは明白だったので半分の1m X 1.75m に裁断。
それでもかかった時間は4時間ほどで、しかもしわしわが目立ちます。これでは3日フルで徹夜で折り続けても折り終わりません。

まずワークスペースを床にしていたこと、そしてここで不規則な折り筋パターンを採用した副作用。一本一本の折り筋が不規則であるため1作折っても2作折っても折り慣れない…4時間かけて作って次もまた4時間。これでは体力もメンタルももちません。
考えろ考えろとひたすら折りながら考え続け、ここである程度のバランスで規則性を取り入れて不規則なパターンとのバランスを取ることにしました。

そうして完成したのが2作目以降のパターン。ある程度規則性を織り交ぜた結果折り上げるまでの効率が格段に上がって3日目には4時間から30分台まで時間短縮。
量産化に成功です!
とはいえその量産化に成功したのは二日目のこと。制作期間が3日あるとはいえもう時間がありません。ひたすらこれからはこの手法で大量生産となります。
しかし最終日三日目はそれでも時間が足りず、初めの不規則的な土台となる折り筋を3枚まとめて折ることで時間がかかる作業を3倍効率で終わらせることができ、それも功を奏した結果1枚あたり3~40分で折り上げ、3日で32枚の巨大越前和紙を折り終えることができました。
搬入
さて制作の課題は全て片付けましたがまだまだ課題は降ってきます。
作品搬入です。今までの作品展示だと、1個2,30センチの個々で完結する作品を並べて終わりですが、今回はそうはいきません。
なんせ一枚が1mを超える作品で、それを天井から吊るす方法も和紙の重さや折り筋を付けたときの固さも未知数なので暫定案はあるものの現場である程度手探りで完成させる必要があります。
許される時間は朝9時から18時までで、この間に試行錯誤して買い出しにもいかないといけない…
意外と時間がない。急げ!
初めはビニールテープと釣り糸で作品と天井のワイヤーを結びつけるつもりでいましたが、やってみるとうまく行かず。再びダイソーへ走り、アルミワイヤーとワッシャーを買ってきて自前であったクラフトテープで固定すると無事安定!
あとは残りの31枚を吊るすだけの繰り返しです。
この間にも色々うまいこといかず一度吊下げた作品が落ちたり様々な試行錯誤がありましたが搬入も時間との闘いでした。搬入可能時間18時まであと30分という中、終わらない絶望の表情で作品を吊下げていると、なんとこの和紙を漉いた会社さんが手伝って頂いて丁度18時に完成!
この作品は折り手の僕の苦労や情熱だけではなく、紙を作った会社さんも含め様々な人が関わって完成する作品なんだ、ということを3日間夜通し作り上げた感動とともに感じさせられた貴重な経験でした。
今回の作品制作で得られたものは非常に多かったと思いますし、チャレンジしてみないと絶対に見えてこなかった課題も浮き彫りに出来ました。
今後は今回のような自分にとっても世界でも誰もやったことがないような挑戦的な作品を制作していきたいものです。
今回の作品制作を通して関わって頂いた方々、今も僕の活動を応援して下さっている方々に感謝感謝です…
ということで長くなりましたが作品の写真をどうぞ…













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