浜松の伝統、阿多古和紙
浜松市天竜区に江戸時代初期ごろから伝わる手すき和紙「阿多古和紙」の唯一の継承者、大城忠治さん(90)=同区西藤平=が今月の91歳の誕生日を前に、紙すきに精を出している。
あなたの静岡新聞 2021.10.13
阿多古和紙は天竜川支流の阿多古川流域の農家が副業として盛んに生産していた。良質な水があり、原料になるコウゾの生育に適した土地であったことから最盛期は70軒ほどが和紙作りをしていた。
しかし、和紙の需要は減少。今では大城さんが自らコウゾを栽培し、1人で阿多古和紙を守っている。
『阿多古和紙、後世に 「唯一の継承者」技光る』
ネット上のニュースによると、浜松市には昔から伝わる和紙があり、今では大城さんという職人さんただ一人が生産しているという。まさに伝説の和紙。
経緯
いろんな紙素材を扱う折り紙アーティストとしては、「浜松に伝統の和紙素材があるのか!」ということでとても気になるトピックでした。
しかしウェブ上ですら情報がとても少なく、連絡できる電話番号もなければメールアドレスもなく数か月の月日が過ぎ、どうしたら会えるだろうかと頭の片隅で考えていました。
ある日ふと、「市役所なら情報をもっているか?」と思い、ようやく和紙を作っている職人の繋がりのある方と連絡が取れたのでした。
阿多古和紙の工房訪問
田中さんという、大城さんから紙漉きを教わっている方と連絡がとれ、僕が住んでいる浜松市中区から車で40分ほど北上した天竜区。
そこは浜松駅などがある「街」という印象の浜松市とは真逆の山の中。グーグルマップが示すその目的地は清流、阿多古川が流れるあたりにありました。
田中さんという方のお家で待ち合わせ、そこからさらに山道を進むこと15分ほど。。
田中さんのマニュアルの軽トラで1速でないと上がれない急こう配な坂道をいくつか乗り越え、見えてきたひらけた場所に、なんと人が住んでいそうなお家があるではありませんか。
因みに上の写真は和紙を作るための植物を育てていたりする畑や、和紙を作る工房などが写っていて、住んでいるお家はカメラの反対側にあります。
大城さんとの出会い
大城さんは93歳くらいのおじいちゃんだと聞いていましたが、お会いしてみるととっても元気で気さくなおじいちゃんで、僕が持ってきた和紙の折り紙作品を見せると「おおーーーっ!すごいねー」と驚いてくれました。
職人というと、今まで会ってきた経験から気難しい方が多く、僕の作品をこれほど驚いてくれるのかと逆にとても驚かされました。作品は越前和紙で制作した作品でしたが、違った素材の違った表現をも受け入れてくれるとても柔軟な方なんだと感じました。
折り紙素材としての阿多古和紙
さて、折り紙アーティスト視点での阿多古和紙についてです
阿多古和紙は折り方によってはとても繊維のまだら具合がよく、ハリもあり折り筋が付きやすい紙といった印象。
和紙というと、ものによってはこしが強く折り筋が全然つかなかったり、はっきりした折り筋にならない素材もあり折り紙には不適な素材もあるのですが、阿多古和紙はどちらかというと折り紙に向く素材と言えます。
また、折る表現の他に、やぶった破り目の毛羽立ち具合も味があって千切った表現もできたり、繊維が長いので、強度を活かした使い方も出来そうです。
大城さんは、「ここに置いてあっても仕方ないから、全部もってけー」といって制作に使わせて頂けることになりました。富山の置き薬スタイルです笑
機械漉き素材とは違う、人の手で一枚一枚丁寧に作られた阿多古和紙。
この和紙の良さを最大に生かせる作品を作ろうというモチベーションが跳ね上がりました。本当に感謝感謝です。。
これからこの和紙を使ってどんなイベントができるか、どんな作品が出来るか、みなさまお楽しみに!!
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